コロナ禍で中古車の価格高騰
新型コロナウイルス禍の影響などで、お手ごろな存在だった中古車の価格が上昇している。感染リスクを回避できる移動手段として自動車が注目され、需要は増加。一方で、世界的な部品の調達難による新車の生産停滞を受け、中古車市場への供給も減少し、品薄感が強まっていることが背景にある。新車の生産回復が遅れれば、中古車価格も高止まりする懸念がある。 (久下悠一郎、鈴木啓紀、木造康博)
◆密回避で需要増、生産停滞受け供給減
「納期が見通せない新車に比べ、中古車はインターネットで在庫を確認して気軽に車選びできる利点がある」。県内で中古車と新車の販売を手掛けるサーラコーポレーション(愛知県豊橋市)の担当者は、中古車市場の活況ぶりを説明する。同社の昨年十二月〜今年八月の中古車販売台数は前年同期比で一・二倍に伸び、新車の販売台数に並ぶ勢いという。
部品調達元の東南アジアでの感染再拡大や半導体不足を受け、十月もメーカー各社の生産は鈍い。トヨタ自動車は世界生産を当初比で四割減とし、スズキも国内二工場を数日停止する。新車の販売現場では納期遅れが主要車種で広がり、短納期の中古車へ需要が移っている。ただ、新車販売の落ち込みは、買い替え時の下取りで生まれる中古車の供給も減らす。市場は在庫不足で「良質な店頭商品の確保が難しくなっている」(スズキの中古車販売担当者)状況だ。
中古車競売大手のユー・エス・エス(同県東海市)によると、今年四〜九月の成約台数の伸びは前年比で14・5%増だったのに対し、出品台数は10・1%増にとどまった。旺盛な需要に供給が追い付かず、成約車両単価は八十六万八千円で約二割値上がりしている。
今夏、車検前の乗り換えを計画した浜松市内の二十代の女性会社員は、新車販売店で納車時期が「未定」と言われ、中古で走行距離一万キロ未満の国産スポーツタイプ多目的車を購入。ただ「買値は二百四十万円くらいで、新車と変わらなかった」と悔しげだ。
軽自動車を主に扱う「軽ランド」(浜松市東区)の担当者は「利益を上乗せすると、新車との価格差がなくなる」と、中古車の仕入れ価格の高騰に困惑する。
中古車の価格動向について、リクルートの中古車情報サービス「カーセンサー」の西村泰宏編集長は、新車価格自体の高まりなどを受けて「コロナ禍前から上昇の兆しがあった」と説明。今後も「需給バランスが不安定のままなら価格は高止まりし、低価格志向の顧客には厳しい状況が続きそうだ」と予想する。
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